自宅や施設にプールを設けるとき、どんな素材を使うかによって仕上がりも使い勝手も大きく変わります。コンクリートやFRP、ステンレス、パネル+強化コンクリートなど、選べる素材はさまざま。それぞれの特徴や施工方法、維持管理のしやすさを理解しておくことで、後悔のないプールづくりにつながります。この記事では、主要な4種類のプール素材についてご紹介します。
コンクリート製プール
コンクリート製プールは、昔から学校や公共施設でも広く採用されてきた工法です。
耐久性と重厚感が魅力
コンクリート製プールは、曲線や段差、水深の変化などを自在に組み合わせやすく、屋内外を問わず品質を安定させやすい点が強みです。タイルや天然石などの仕上げ材を選べるため、周囲の景観と調和した高級感のあるデザインを実現できます。
適切に施工された場合は長期使用に耐えますが、性能を保つための定期点検は欠かせません。経年変化や地盤の動きで微細なひび割れが生じることがあり、水漏れの原因になり得るため、早期の発見と補修が重要です。
施工期間とコストにはゆとりを持って
コンクリート製プールは、掘削、基礎づくり、鉄筋組み、型枠設置、コンクリート打設と工程が多く、工期が長くなりがちです。打設後は「養生」と呼ばれる乾燥期間が必要で、最低でも1週間以上、場合によっては数週間かかります。養生期間は天候にも左右されやすく、養生している間は他の作業が進めにくくなります。
防水層の施工や仕上げ作業まで含めると、一般的な家庭用でも完成までに1ヶ月から3ヶ月ほどを見込むケースがあります。初期費用はFRPなどに比べ高くなりがちですが、素材そのものに耐久性があることや定期的な補修を行うことで使い続けられる点を踏まえ、長期的な目線で検討されることが多い工法です。
防水処理と定期補修がカギになる
コンクリート自体に防水性はないため、塗膜防水やシート防水などの防水処理が必須です。防水層や仕上げ材は、プール水の塩素や紫外線で少しずつ劣化します。色あせや塗膜の剥がれを放置すると水が浸入し、内部の鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートを内側から傷める恐れがあります。塗装の塗り替えや目地の補修を5年から10年ごとの目安で実施することが大切です。
FRP製プール
FRP(繊維強化プラスチック)製プールは、軽さと強さを両立した素材を用い、工場で成形したユニットを現場で組み立てる方式が中心です。
屋上設置にも対応できる軽さ
FRP製プールは軽量なため屋上への設置にも適しています。重機の搬入が難しい都心の住宅地や狭小地でも、施工のハードルが下がります。本体は品質管理の行き届いた工場で製造され、現場では主に組み立て作業となるため、天候による工事の遅延が生じにくい点も利点です。
メンテナンス頻度には注意が必要
FRPは紫外線に弱い性質があるため、表面のトップコート(ゲルコート)の状態管理が重要です。長時間の日差しで色あせや細かなひびが生じると、見た目だけでなく素材保護の機能も低下します。劣化を放置すればFRP自体のダメージにつながるため、使用環境にもよりますが5年から10年を目安に再塗装を検討しましょう。施工時のトップコートの厚みや品質も耐久性に影響するため、信頼できるメーカーや施工業者の選定が欠かせません。
リユースや移設が可能なケースも
ユニット構造を活かし、製品によっては移設や再利用に対応できる場合があります。引っ越しや施設用途の変更に合わせ、解体して別の場所で組み立て直す選択が視野に入ります。必要に応じて一部ユニットのみを交換することも可能で、廃棄物を減らしたいときにも有効です。
ステンレス製プール
ステンレス製プールは、錆びにくさと耐久性を備えた金属素材を活用し、躯体を構築する工法です。衛生面でのメンテナンスの容易さが特徴です。
高い耐震性とメンテナンスのしやすさ
ステンレスは硬さに加えて延性も持つため、地震の揺れや地盤沈下などの外力に対してひび割れが起きにくく、水漏れのリスクを抑えやすい素材です。表面は滑らかで、水垢や藻が付着しにくく、清掃しやすい点も衛生管理に役立ちます。
素材自体の耐食性が高く、塗装なしで長期使用できるグレードもあります。塗装の塗り替えが不要な場合は、メンテナンスの手間とコストを抑えやすいでしょう。なお、沿岸部など塩分が付着しやすい環境では、付着した塩分が錆びを誘発する可能性があるため、定期清掃などのケアが必要です。
施工技術の差が仕上がりに出る
ステンレス製プールは、パネル同士をつなぐ溶接の精度が防水性能と外観を左右します。滑らかで均一な溶接仕上げには経験豊富な技術が欠かせません。また、鉄粉や鉄製工具の接触によってステンレス表面に発生する「もらい錆」への配慮も重要です。現場の管理と適切な工具の使用が不可欠であり、施工実績のある業者を選ぶことが品質確保の近道です。
デザイン性の高い仕上がりも可能
金属特有の光沢は、ホテルやスパ、デザイン性の高い住宅で好まれる質感です。水を張ると光を反射して美しい水色に見え、清潔感のある印象を与えます。必要に応じてカラー塗装を施すこともでき、建物の雰囲気に合わせた表現が可能です。塗装仕上げを選ぶ場合は、経年の色あせや塗膜劣化に応じて再塗装が必要になる点をあらかじめ踏まえておきましょう。
パネル+コンクリート
パネル+強化コンクリート工法は、工場製作の特殊パネルを型枠として用い、現場でコンクリートを打設するハイブリッド型の手法です。
短期間で施工が可能な新しい工法
この工法は、型枠の組み立てや解体など時間のかかる工程を省くことで、現場作業の効率化を図ります。パネルとコンクリートで躯体を形成するため、コンクリート使用量は従来の約半分、掘削範囲も最小限で済むことから省スペースでの施工を実現しています。断熱材を組み込んだパネルも多く、保温性が高い点も特徴です。温水プールの熱が逃げにくくなることで、年間の光熱費を抑える効果が期待できます。
プールの光熱費削減と合わせて、環境に優しく経済的な屋外ソーラーシャワーを検討してみてはいかがでしょうか。太陽光の力でお湯を沸かすため、プールサイドで気軽に温水シャワーが楽しめ、ランニングコストもかかりません。
機能性とデザイン性を両立させた「アルケマデザイン」の屋外ソーラーシャワーは、プールの価値をさらに高める選択肢の一つとなるはずです。製品の詳細については、以下のページをご覧ください。
対応業者の少なさとコスト上昇に注意
パネル+強化コンクリート工法は比較的新しい技術で、対応できる施工業者が限られているのが現状です。採用を検討する場合は、業者選定に時間がかかる可能性を見込み、早めに相談を始めましょう。設計自由度が高い分、オプションを重ねると費用がふくらみやすい傾向があります。保証やアフターサービスの内容も業者によって異なるため、契約前に範囲と条件を丁寧に確認することが欠かせません。
防水とライナー交換のメンテナンスが前提
この工法では、プール躯体の表面を防水シートで覆うことが一般的です。ライナーは耐用年数があり、10年から15年程度を目安に交換が必要となります。破れや劣化は水漏れに直結するため、定期点検は必須です。交換時に色やデザインを変えれば、印象を手軽に一新できます。
それぞれの素材の特性を知って、目的に合ったプールづくりを
プール施工に使われる素材には、それぞれに異なる強みと注意点があります。目的や設置場所、予算、メンテナンスの手間などをふまえて、最も自分に合った素材を選ぶことが、理想のプールをつくる第一歩です。